津波災害について

津波による構造物に与える影響とその被害

構造物に与える影響

津波が構造物に与える影響は大きく5通りの力として考えられている【図-5】。

a)衝撃力
b)水圧
c)浮力
d)抗力
e)サージ力

また、構造物の基礎を構成する地盤に関して浸食と急激な水圧の変化によって地盤の液状化を起こすこともある。

【図-5】構造物に作用する津波による各種荷重【図-5】構造物に作用する津波による各種荷重

津波による構造物および地盤の被害

ここで、津波による構造物および地盤の被害について、2011年東日本大震災と2004年スマトラ沖地震の調査で観察された被害例を中心に記載する。

建物の被害

一般的に建物は木造、鉄骨、石・レンガ積およびRC構造に分類される。水の密度に比べ、木造以外は材料の密度が大きい。また、津波の場合、海水が残骸を含んでいるため、その密度が高くなる。

木造構造物の被害

【写真-1】に2011年東日本大震災で気仙沼、陸前高田および荒浜地区で発生した被害の様子を示す。木造構造物は軽いため、家屋はそのまま基礎から外されて流されてしまう。また、移動中に障害物にあたるとばらばらになってしまう。
気仙沼では津波が到達したレベルまで木造家屋の被害が著しいがそれより標高が高いところで被害は見られない。このような被害は津波被害が発生した過去の地震でも見られている。一般的に木造構造物は揺れに強くても、津波に対して大変貧弱である。そのため、津波による浸水の可能性がある地域では木造家屋の建設は避けるべきである。

【写真-1】2011年東日本大震災で気仙沼、陸前高田および荒浜地区で発生した被害の様子(Aydan 2011)【写真-1】2011年東日本大震災で気仙沼、陸前高田および荒浜地区で発生した被害の様子(Aydan 2011)

石・レンガ積造構造物

石・レンガ積構造物は近年日本で建設されることがないため、日本で津波による石・レンガ積構造物の被害は大変少ない。2011年東日本大震災で気仙沼市に存在する石積倉庫などは津波による各種の力に抵抗でき、被害を受けていない。
一方、2011年東日本大震災で津波被害が最も大きかった女川町で、海岸近傍の粘板岩の岩盤ブロックが転倒していた。

【写真-2】気仙沼市および女川町に見られる津波被害の様子(Aydan 2011)【写真-2】気仙沼市および女川町に見られる津波被害の様子(Aydan 2011)

鉄骨の構造物

鉄骨構造物の場合、骨組み構造物であるため、仕切りにパネルが利用されている。【写真-3】は2011年東日本大震災の際に陸前高田市、女川町および荒浜地区で見られた津波による鉄骨構造物の被害を示す。骨組構造は津波による衝撃力で若干被害を受けているものの、最も大きな被害は仕切りのパネルに発生している。このパネルが損傷を受けて外れ、そこを津波そのまま通過していった。

【写真-3】2011年東日本大震災で陸前高田市、女川町および荒浜地区で津波による鉄骨の構造物被害の様子(Aydan 2011)【写真-3】2011年東日本大震災で陸前高田市、女川町および荒浜地区で津波による鉄骨構造物の被害の様子(Aydan 2011)

コンクリート・RC構造物

コンクリートの比重は水と比べて約2倍以上である。そのため、津波に対して抵抗力が大きいが、衝撃力・水圧・抗力などによって被害を受けることが考えられる。また、水圧および水流によって基礎地盤の液状化や洗掘などが発生することも考えられる。
【写真-4】は名取市で発生したRC構造物の被害の様子を示す。名取市の津波高さは写真中の建物の高さを超え、津波によって発生した流れで基礎地盤が洗掘されている。特に川に近い位置で洗掘が激しく、RC構造物は転倒してしまっている。【写真-5】は女川町で発生したRC構造物の転倒被害の様子を示す。RC建物は衝撃力、水圧および抗力によって大きな被害を受けており、今後耐津波設計を考える上で大変重要な事例になると思われる。
【写真-6】は陸前高田で見られた海岸近くのアパート被害の様子を示す。この場合は津波が建物の4階に達して、窓、ドアなどを破って建物中を通過している。また、建物の基礎部にも洗掘の跡が見られた。

【写真-4】名取市で発生したRC構造物の被害の様子(Aydan 2011)【写真-4】名取市で発生したRC構造物の被害の様子(Aydan 2011)

【写真-5】女川町で発生したRC構造物の転倒被害の様子(Aydan 2011)【写真-5】女川町で発生したRC構造物の転倒被害の様子(Aydan 2011)

【写真-6】陸前高田市海岸近くのアパートの被害の様子(Aydan 2011)【写真-6】陸前高田市海岸近くのアパートの被害の様子(Aydan 2011)

【写真-8】は津波によるRC建物の被害が大きかった女川町のものである。建物はそのまま残っているが津波はRC構造物の中を通過している。この場合、建物は完全に水没し、津波の流れは建物の窓・ドアなどを破って発生していた。

【写真-8】女川町で発生したRC構造物の被害の様子(Aydan 2011)【写真-8】女川町で発生したRC構造物の被害の様子(Aydan 2011)

交通施設:橋・橋脚・空港・港・道路・鉄道

一般的に橋や橋脚では杭基礎が利用されることが多い。また、橋桁は橋脚に様々な形で固定され、振動時に落下しないようにストッパーなどが利用されている。2004年スマトラ沖地震や2011年東日本大震災のような巨大地震で、津波によって様々な被害が発生している。
ここで代表的な幾つかの被害例を示す。【写真-9】は陸前高田市で発生した道路橋の被害の様子を示す。この橋の場合橋桁が津波によって落下し上流の方向に運ばれている。横方向移動に関して設置されているストッパーは損傷を受けて切れている。さらに橋台が洗掘されている。

【写真-10】は陸前高田市で発生した鉄道橋の被害の様子を示す。この鉄道橋の場合、橋桁の落下と別に橋脚が転倒した。橋脚は津波による力で継ぎ目部分の上部が転倒している。継目部分には鉄筋の存在が見受けられない。鉄道橋の場合も橋台と盛土部分で洗掘が発生している。
【写真-11】は陸前高田や仙台空港近傍で見られた道路や鉄道盛土の被害の様子を示す。これらの被害は津波による空隙に作用する水圧で盛土材が液状化したことや流れによる抗力で洗掘が発生したことによる。【写真-12】は津波によって被害を受けた電車を示す。

【写真-9】陸前高田市で発生した道路橋の被害の様子(Aydan 2011)【写真-9】陸前高田市で発生した道路橋の被害の様子(Aydan 2011)

【写真-10】陸前高田市で発生した鉄道橋の被害の様子(Aydan 2011)【写真-10】陸前高田市で発生した鉄道橋の被害の様子(Aydan 2011)

【写真-11】陸前高田や仙台空港近傍で見られた道路や鉄道の盛土の被害の様子(Aydan 2011)【写真-11】陸前高田や仙台空港近傍で見られた道路や鉄道の盛土の被害の様子(Aydan 2011)

【写真-12】津波によって被害を受けた電車の様子(Aydan 2011)【写真-12】津波によって被害を受けた電車の様子(Aydan 2011)

標高が平均3~4mである仙台空港は海岸から約1㎞離れており、近くに川も流れている。この地域では津波高さが10mに達しており、空港全体が浸水した。空港のターミナルビルと周辺設備が津波による被害を受けた。
【写真-13】は空港の被災後の衛星画像とターミナルビルやエスカレーターなどの被害を示す。津波はターミナルビルの一階を浸水し、空港としての機能が失われた。
災害時に救援物資や救出派遣隊などの受け入れ時に空港が大きな役割を果たすため、空港が被害を受けることはどうしても避けるべきである。滑走路は短期間で復旧しているが、空港としての機能は一か月後に復旧した。仙台空港の被害から、できるだけ空港は高台に建設すべきということが教訓の一つである。

【写真-13】空港の被災後の衛星画像とターミナルビルやエスカレーターなどの被害(Aydan 2011;衛星画像Google-Earth)【写真-13】空港の被災後の衛星画像とターミナルビルやエスカレーターなどの被害(Aydan 2011;衛星画像Google-Earth)

空港と同様に港も交通施設として大きな役割を果たしている。【写真-14】は被災地におけるいくつかの港の被害の様子を示す。津波対策として各港に防波堤、堤防などが建設されていたが東日本大震災で殆どの防波堤や堤防が大きな被害を受けた。
その主な被害要因は設計津波高さが低かったことである。津波はほとんどの防波堤・堤防を越えてしまい、水圧、抗力などによって基礎地盤の洗掘、液状化などが発生し、対策工は機能を発揮できなかった。

【写真-14】各地点における港の被害の様子(Aydan 2011)【写真-14】各地点における港の被害の様子(Aydan 2011)

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