地盤災害について

地盤災害とは

地盤災害は主に地震や気象条件によって発生することが多い。
しかし、一部の地盤災害は地盤の劣化・クリープ挙動によって発生することもある。主な地盤災害は地すべり・斜面崩壊、崖の崩壊、シンクホール、陥没、盛土崩壊、擁壁崩壊、液状化などである。ここでそれぞれの地盤災害について説明する。

斜面崩壊・地すべり

一般的に斜面は大きく土質斜面および岩盤斜面の2つのグループに分類される。自然斜面の場合、表層近傍に土質化した風化層が存在する。特に表層近傍の風化層が、大雨、地震などで度々表層滑り破壊し、大きな被害をもたらす。
例えば【写真-1】のように、2018年9月6日に北海道胆振地域で発生した斜面崩壊の大半はこのグループに分類される。地すべりという表現がよく利用されるが、斜面崩壊は滑りだけではなく様々な崩壊パターンがある。

【写真-1】北海道胆振地震で発生した表層すべり【写真-1】北海道胆振地震で発生した表層すべり

この節では一般的な斜面崩壊の様式を紹介する。
斜面の破壊は岩盤の力学特性と同様,岩石の力学特性と不連続面の力学特性および不連続面の幾何学特性の3つの要因を反映しており、それら3つの要因の組合せにより、いろいろな破壊様式が考えられる(Aydan 1989)。ここでは、まず、岩石と不連続面の力学特性に着目して破壊様式を大きく3つに分け、さらにその中で発生し得る破壊様式を考えて分類する【図-1】。
以下にそれぞれの様式の破壊発生機構について述べる。

(1)岩石の力学特性に依存する破壊様式

(a)せん断破壊
この破壊は、土質斜面と岩盤中の母材のせん断応力がせん断強度を超えてすべりを生じ破壊を起こすものである。

【図-1】斜面の崩壊様式(Aydan,1989)【図-1】斜面の崩壊様式(Aydan,1989)

(b)曲げ破壊
この破壊は、斜面ののり尻部分が侵食などで削り取られたり弱くなったときに生じる。破壊の様子は片持ちばりの破壊に似ている。このような破壊は一般的に海岸、川周辺の崖などにしばしば発生するものである【写真-2】。

【写真-2】曲げ破壊による海食崖の崩壊例【写真-2】曲げ破壊による海食崖の崩壊例

(2)岩石の力学特性と不連続面の力学特性に依存する破壊様式

(a)せん断とすべりの複合破壊
不連続面の傾斜角が斜面のそれよりも大きいときに、斜面上部で不連続面に沿ってすべりが生じ、その後のり尻で岩石中のせん断応力がその強度を超えたため複合的な破壊が生ずることがある。一方、不連続面の傾斜が小さいときには、斜面上部でせん断破壊が起こり、その後斜面先ですべりが生じて破壊に至ることもある。

(b)座屈破壊
この破壊は、不連続面の傾斜が斜面のそれとほぼ等しく、不連続面の間隔が斜面の高さ比べて非常に小さいときに発生する。

(c)たわみ性トップリング破壊
トップリング破壊は、斜面を構成する岩柱あるいは岩塊が斜面前方へ倒れ込むようにして破壊するものである。そのうち、たわみ性トップリング破壊は層状岩盤で発生し、岩柱が前方に倒れ込んで、岩柱の底面の外縁に過大な引張り応力が加わり、破壊に至るものである。

(3)不連続面の力学特性に依存する破壊様式

(a)滑り破壊
この破壊は、不連続面に沿ってすべりを起こす破壊であり、すべり面の形状によって平面すべり破壊とくさび形すべり破壊に分けられる。
平面すべり破壊は、1つの不連続面上ですべりが発生するものを言い、斜面の走行と不連続面のそれとが平行もしくは平行に近いときに発生し易い。一般的にみられる表層すべりも基本的にこの破壊様式に属する。
くさび形すべり破壊は、2つ以上の不連続面ですべりが発生して破壊に至るもので、そのすべり面はくさび形を成している。

(b)ブロック性トップリング破壊
この破壊は、岩盤中にブロック状の不連続面が発達しているときに発生し易く、岩塊がすべらずに前方に倒れ込むようにして破壊するものである。

(c)トップリングとせん断の複合破壊
この破壊は、トップリング破壊とせん断破壊の両方が複合的に生じて破壊にいたるもので、岩盤中の不連続面が層状、ブロック状の両方の場合にみられる。

近年の研究で(Aydan 2016)津波によって斜面崩壊が発生することも報告されている。
【写真-3】は2004年スマトラ沖地震によってAceh州の海岸沿いに見られた斜面崩壊例を示す。

【写真-3】2004年スマトラ沖地震によるAceh州の海岸沿いに見られた斜面崩壊例【写真-3】2004年スマトラ沖地震によるAceh州の海岸沿いに見られた斜面崩壊例

陥没・シンクホール

陥没・シンクホールとは地下水に溶ける性質を有する岩盤(例えば、石灰岩、蒸発岩)が地下水の流れに沿って空洞化し、その大きさが周辺岩盤の強度を超えると陥没し、地表面にSinkhole(シンクホール)が形成される現象である【写真-3-2】。
【図-2】はシンクホール形成過程を示す。空洞は一般的に水没していると安定するが、地震や地下水の変動があるとシンクホールが形成されることが多い。

【写真-3-2】陥没例【写真-3-2】陥没例

【図-2】空洞の陥没過程【図-2】空洞の陥没過程

自然空洞の陥没以外に人工的に掘削された空洞も陥没することがある。【写真-4】は人工的に掘削された空洞の陥没事例を示す。
また、地震によって人工的な地下空洞の陥没が発生することが近年の地震で明らかになっている。【写真-5】は2011年東日本大震災で発生した陥没例を示す。

【写真-4】人工的に掘削された空洞の陥没によるシンクホール【写真-4】人工的に掘削された空洞の陥没によるシンクホール

【写真-5】2011年東日本大震災による人工的空洞の陥没によるシンクホール【写真-5】2011年東日本大震災による人工的空洞の陥没によるシンクホール

盛土崩壊・堤防

盛土は一般的に道路・鉄道やアースフィールダムなどで見られる構造物である。盛土の崩壊は自重、浸透流および地震によって発生することが多い【写真-6】。時には基礎地盤の液状化によって発生することもある。
堤防も基本的に盛土構造物であるが、主に河川や海岸周辺に建設される。堤防の場合、水位の上昇によるパイピング現象や、水位が堤防高さを超えることによる洗掘現象により、堤防の崩壊が発生する【写真-7】。

【写真-6】2011年東日本大震災による盛土の崩壊例【写真-6】2011年東日本大震災による盛土の崩壊例

【写真-7】堤防の崩壊例【写真-7】堤防の崩壊例

擁壁崩壊

石積み擁壁を建設する際に河川石や採石場で採集した岩石ブロックが利用されることが多い。
河川石の石積み擁壁の場合、石のブロックの角がなく、大円の形をしたものが多い。また、裏込め材は透水性を高めるため、丸い川石を利用することが多い。擁壁を建設する前に本地盤を一定の角度で掘削する場合とそのままにする場合がある【図-3】。
地震・機械振動などによる石積擁壁の様々な段階の変状がはらみだし、ブロック間のすべりと開きおよび崩壊として発生する。【写真-8】は近年の国内外の被害地震で発生した石積み擁壁の崩壊例を示す。

【図-3】一般的な擁壁と地盤の構造【図-3】一般的な擁壁と地盤の構造

【写真-8】石積城壁の崩壊例【写真-8】石積城壁の崩壊例

地盤の液状化

地盤の液状化現象は、飽和状態にある地盤が振動を受け、間隙水圧が上昇し、それに伴って有効応力が低下し、せん断抵抗を失い、液体のような挙動がをす現象である。
地盤の液状化によって

1)地盤の支持力がなくなり、構造物が沈下する
2)軽い構造物が浮上する
3)地盤が傾斜すると、地盤が流れる(側方流動)
4)構造物に作用する側圧が上昇する

【写真-9】は2011年東日本大震災で見られた地盤の液状化現象とそれによる構造物の被害例を示す。

【写真-9】2011年東日本大震災による地盤の液状化現象とそれによる被害例【写真-9】2011年東日本大震災による地盤の液状化現象とそれによる被害例

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