津波災害について

津波の基礎知識

津波とは

津波とは、港で観測される波という意味であり、海岸を急に襲う大波のことである。
海底下で地震が発生すると、海底面の上下方向の急激な変化によって海水全体が運動し、海水が周辺に波長が数キロから数百メートルになる波として広がって行く現象である。
波長は非常に長いものであるため、津波は連続して押し寄せ、沿岸での高さの数倍の標高まで遡上する。また、海岸が浅くなると波長が短くなり、波高が急激に高くなる特徴がある。また、津波が引く場合も強い力で長時間にわたり引き続けるため、破壊した家屋などの漂流物は一気に海中に引き込まれる。

津波はなぜ起きるのか

津波は一般的に地震が海底下で発生した場合、地震断層(例えば、正断層あるいは逆断層)の上下方向の運動によって発生する。しかし、比較的閉じた形状を有する湖や湾の場合では、横ずれ断層の場合でも発生することがある。地震以外に、火山噴火や沿岸の山崩れ、海底地すべり、隕石の落下などによって津波が発生することがある【図-1】。

【図-1】津波発生メカニズム【図-1】津波発生メカニズム

地震断層と津波の関係

海底における地震断層の上下方向の運動量は基本的に海水の非圧縮性を考慮すると震源地域で津波の波高はほぼ海底の上下変位と等しいであろう。しかし、断層破壊面の大きさが有限であるため、震源から離れるにしたがって、波高高さが減衰することになる。

津波の高さ

津波が構造物に与える影響や構造物の耐津波設計を考える際に、津波高さと速度が最も重要なパラメータとなる。
津波高さに関して、海岸線での津波高さと遡上高津波高さといった言葉が利用されている【図-2】。マスコミで津波高さとして一般的に報道されるのは遡上高さである。遡上津波高さは海底地形、海岸線形状および津波の侵入方向などに大きく影響される。特に入江のような場所において、遡上津波高さが大きくなることが多い。しかし、構造物の耐津波設計やその影響を考える上で海岸線での津波高さが工学的に最も重要なパラメータである。

【図-2】各種津波高さの定義(Aydan 2008より)【図-2】各種津波高さの定義(Aydan 2008より)

地震のマグニチュードと津波規模の関係

地震のマグニチュードと津波規模の間には密接な関係があり、一般的に上下成分を有する地震のマグニチュードが大きくなると津波の規模が大きくなる。地震のマグニチュードと津波高さについて、Iida(1967)とAbe(1979)が地震のマグニチュードと津波高さの間の関係式を提案している。Iida(1967)の式は気象庁(ロカール)マグニチュードと津波高さについて経験式提案しているが、津波高さについては区別していない。Abe(1979)が提案した推定式の場合、津波高さが海岸線での津波高さであり、津波遡上高さが海岸線での津波高さの2倍であると述べている。

近年Aydan(2008)は2007年までに発生した世界的に記録がある津波データの分析を行い地震のモーメント・マグニチュードと海岸線での津波高さの推定式を提案した。また、遡上津波高さは一般的に海岸線での津波高さの2.5倍あるいはそれ以上であると記述している。【図-3】はAbe(1979)とAydan(2008)が提案した地震のモーメント・マグニチュードと海岸線での遡上津波高さの間の関係式と実測値を比較したものである。実測値はAbe(1979)とAydan(2008)の推定値にかなり近いが、バラツキがある。

【図-3】地震のマグニチュードと各種津波高さの関係(Aydan 2008より)【図-3】地震のマグニチュードと各種津波高さの関係(Aydan 2008より)

津波の速度(v)と到達時間(T)は一般的に海底の深さ(d)に比例し、下記の式で推定される【図-4】。

【図-4】の式

ここにgとxは重力加速度と震源からの距離になる。海底の深さは一般的に変化するため、距離の関数になる。
式(2)から到達時間(T)を求める際に数値積分が必要となる。

【図-4】津波の速度と到達時間に関するパラメータ【図-4】津波の速度と到達時間に関するパラメータ

上記の評価である程度津波高さ、速度および到達時間を推定することが可能であるが、3次元的な津波伝達と津波高さなどを求める際にNavier-Stokesの式が利用される。しかし、海岸線で地形の影響を受けて、波が崩れるため、正確な津波高さとその伝達を求めることが困難である。また、解析領域における構造物の形、地形など詳細に表現できないため、津波が構造物に与える影響を求めることも困難である。

「津波災害について」TOPに戻る