GNSSデータでみた南西諸島の水平変位
国土地理院のGNSS観測データによると、固定点を対馬とした場合、南西諸島全体は年間約1~7 cmの速度で南南東方向へ移動しています。東シナ海には観測点が存在しないため、南西諸島の大陸側(ユーラシアプレート)に対する相対的な運動を見るため、大陸側に近い対馬を固定点としています。一方、南大東島および北大東島は西北西方向に移動しています。これはこれらの島々がフィリピン海プレート上に位置し、同プレートが西北西方向へ沈み込んでいることを示しています。

国土地理院GNSS観測より得られた5年間(2020年5月~2025年5月)の水平変位速度場。上対馬を固定。
南西諸島の変位速度は、北部琉球弧で 1~2 cm/年、中部琉球弧で3 cm/年、南部琉球弧で 4~7cm/年と見積もられています。これらの変位は沖縄トラフにおける背弧拡張運動を反映しており、速度は北部より南部で大きくなる傾向があります。特に与那国島では最も大きな変位速度が観測されています。
GNSS変位速度の解析によると、北部および中部沖縄トラフでは、トラフ軸に対して斜交する方向に、南部沖縄トラフでは軸に直交する方向に拡張が進んでいます。このような拡張様式の違いは、地震活動にも反映されており、北部および中部沖縄トラフでは正断層型と横ずれ断層型の両方の地震が見られるのに対し、南部沖縄トラフでは主に正断層型の地震が発生しています。